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麻衣子先生のカウンセリングルーム

Case.3 生活は順調ですが漠然とした焦りや不安感が…



漠然とした焦りや不安

1年前に職場で人間関係のトラブルがあり、20年以上続けてきた仕事を辞めました。
今は会社のことについては気持ちの整理がつき、専業主婦としての生活に満足しています。夫も子供も何も問題はなく生活は順調なのですが、漠然とした焦りや不安感、気分の落ち込みが取れません。家族や友人が心配して旅行などに連れて行ってくれますが、その時は楽しくても帰ってくると元通り。
どうしたら今の状態を改善できるでしょうか。(50代・女性)

何かを失った時は新しい自分を作るチャンス

20年以上も続けた仕事を不本意な形で辞めるというのは、本当に悔しいことですね。ご本人はもう心の整理はついたと仰っていますが、気分が晴れないのはどうしてなのでしょう。
一般的に50代という年代は、社会的にも身体的にもそれまで上り坂であったものが下り坂に変化する時期です。心理学では「中年期危機」と呼ばれていますが、今までの生き方や理想、自分のアイデンティティなどが維持しにくくなり、自分と向き合わざるを得なくなります。

思春期・青年期は自分を形成する過程での葛藤を経験しますが、中年期では一度形成された自分を作り直す必要に迫られ、葛藤を生じる場合があるのです。これは本当に些細なきっかけでも生じ、それまで疑いもしなかった自分の生き方や考え方が一瞬にして崩れてしまうという経験をする方もいます。
そして、2度目の思春期のような「自分探し」を行うことになるのです。ご本人は人間関係のトラブルでショックを受けられ、また20年以上続けられた仕事を辞めて、それまで家事や育児と仕事の両立で忙しかった生活に余裕が生まれました。その心の隙間に、それまでの生き方に対する疑念が生じたのかもしれません。

しかし、これは新しい自分を作るチャンスでもあります。思春期のように全てが上り坂という時期ではありませんが、「失うことで得る」ことができる強さを身につけられるのは中年期ならではです。
もう一つ考えられるのは、退職時のショックや感情がまだ残っている可能性です。人間の心のシステムは不思議なもので、例えば「怒りはない」と思いこむと、実際怒りが残っていたとしても意識できない状態にすることができてしまうのです。そして、残った怒りは形を変えて身体や気分に表れてきます。

退職時に相談できる方はいらっしゃいましたか?十分に自分の気持ちと向き合って、心から納得のいく答えを出せましたか?これらの答えが仮に「Yes」だとしても、心を開いて信頼できる誰かに話してみると、自分で思ってもみなかったことを話していたり、自然に涙が出てきたりする時があります。
また、「自分はだめな人間だ」「もう希望はない」などの悲観的な考えが無意識に身体や気分に影響している場合もあります。このような感情や信念が退職問題からだけではなく、もっと以前の問題から来ている可能性もあります。

自らの心の声に耳を傾けてみましょう

ここでまず大切なのはご本人が今何をしたいかです。「休みたい」「眠りたい」でも構いません。読書や趣味でもOKです。まずその通りに行動してみてください。そのうち、いろんな心の声が聞こえてきます。
「誰かに話したい」という声が聞こえたら、まず信頼できる方に話を聞いてもらってみて下さい。時間はかかるかもしれませんが、話したいことを話しているうちにきっと何かが見つかるはずです。それでも効果があまり感じられない場合は、やはり臨床心理士によるカウンセリングをお勧めします。
また、ご本人は生活は順調で旅行も楽しめると仰っているのでおそらく大丈夫とは思いますが、家事に支障がでたり、不眠などの症状があれば、一度専門医で診てもらうのもよいと思います。

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麻衣子先生

麻衣子先生Psychologist Maiko

お茶の水女子大学大学院博士前期過程を修了後、臨床心理士資格を取得。東京都心の心療内科クリニックに勤務、東京都スクールカウンセラーにも携わる。

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