老人性うつについての対処法後半部をインタビュー形式にて掲載

アドバイス

「老人性うつの対処法(2)」  酒井和夫氏インタビュー

酒井和夫氏
酒井 和夫 (さかい かずお) 氏
1951年東京都生まれ。
東京大学文学部卒業、筑波大学 医学研究科博士過程修了。
現在「ストレスケア日比谷クリニック」院長。オリコン・エンタテイメントより発売の書籍「患者が決めた!いい病院 2007年度版」内にてストレスケア日比谷クリニックが第3位に選出。

意外に老人性うつというものは見逃されやすいです

― 今日、先生にお聞きしたいのは、近年よく耳にするようになってきた「老人性うつ」とについてなんですが、最近、私どものサイトにも、「老人性うつ」について知りたいという方のメールがよく来ているようなんですね。
そこで今回はまず初めに、この老人性うつというのが一体どういった症状で現れてくるのかというところから教えて頂けますか?

酒井 まず高齢者のうつという場合になりますと、体の不調といったかたちで出てくるケースが圧倒的に多いですね。具体的には、胃の調子が悪いだとか、動悸がするだとか、手足が痺れる、また、歯の噛み合わせが悪いように感じるといったような具合です。ですが、どの場合も実際に体のどこかが悪いというわけではないんですね。

― ということは、体の調子が悪いからうつになってしまうということではなくて、うつになることによって体に何かしらの不調を自ら感じてしまうということですか?

酒井 そうですね。特にこうしたケースが50〜60代以降のご年配の方に比較的多いわけです。大体、三つくらいの不定愁訴で病院に来られる方の中で、診察の結果、体にこれといった問題が見つからないといった場合、そのほとんどがうつ症状であると言ってもいいと思います。ですから、意外に老人性うつというものは見逃されやすいんです。
また、うつ症状であると明らかになった場合にも、老人性のうつにはもう一つの大きな問題として、薬が使いにくいというところがあります。つまり副作用が強く出やすい、また副作用が出る確率が比較的高いという部分があるわけです。

― 実際に老人性のうつの場合はどういった薬を処方されているのでしょうか?

酒井 現時点では、一般的な抗うつ薬を処方しています。しかし、それが必ずしも良い方向に働くとは限らないですね。

早めに手を打っておくことは殊のほか重要です

― では、薬に頼らないで症状を改善させていくための方法としてはどういったことが考えられるのでしょうか?

酒井 基本的なことですが、まず、適度な運動を継続的にとるということはとても大事なことですね。また食生活という点では、どうしても不足しがちなビタミンB群を補うような食事を意識的に摂ることです。また、男性の場合は長年の飲酒が脳に障害を与えて、それがうつ症状を引き起こすというケースも多くありますから、なるべくお酒は控えるといったことですね。

いずれにせよ、前にもお話しした通り老人性うつの場合は壮年期までのうつとは違い、非常に発見されにくいという側面があります。そして老人性うつの場合は、比較的食欲の低下が引き起こされやすいんですね。しっかりと食事をとらなくなってしまうと、当然体力が落ちて、ウィルスなどに対する免疫力も落ちてしまいますから、風邪などの病気にもかかりやすくなってしまうわけです。
高齢者の方にとって、こうしたことは最悪の場合、命に関わる問題ですから、何か少しでもおかしいなと不安を感じ始めたら、早めに手を打っておくことは殊のほか重要です。

― 一般の方が「ひょっとして自分はうつかな?」と不安に思いはじめたときに、その判断材料となるような一番分かり易い兆候というものには主にどういったものが挙げられますか?

酒井 これは一般的にもよく知られていることだと思いますが、やはり全体的な意欲や活動力の低下ですね。例えば、それまでその人が楽しんでやってきたことを、急に億劫に感じ始めたり、興味そのものを失ってしまったり、その結果家に閉じこもってしまうというような場合ですね。

毎日“笑うこと”ですね(笑)

― うつの基本的な改善には、運動することや、食生活を整えること、あるいはサプリメントを飲用するということが効果的だということは分かったのですが、個人の気持ちの持ち方という部分で、うつを改善していくきっかけになるようなことはありますか?

酒井 今は昔と違って、65歳以降のいわゆる高齢者と呼ばれる方々も、皆さん体力的にとてもお若く元気でいらっしゃいます。ですから、会社を退職された後でもボランティアに参加するなり、カルチャーセンターに通うなりをなさって、社会との接点を常に持ち続けることでしょうね。

― ということは、一般的にもよく話されているように、老人性うつというのは、仕事を退職した後に家の中に閉じこもってしまうということが原因の多くだということですか?

酒井 ええ、そういう状況の中で病の種が作り出されているというところはあると思います。
しかし、だからといって若い人たちと同じように街に出かけたり、無理な運動をする必要は全くないわけで、例えば自然散策をしたり、温泉に入ったり、紅葉を見に行ったり、盆栽を始めてみたり、高齢者の方には高齢者の方の楽しみというものがたくさんあると思うんですね。そういう楽しみを多く持つことが、これはうつだけの改善に止まらず、老後の生活を健康的に過ごしていく上で最も大事なことだと私は思います。
そして、毎日“笑うこと”ですね(笑)

<了>|2|

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